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きっかけは映画館
第43章 きっかけは…
『では、新郎新婦の入場です。』
割れんばかりの拍手が、開いたドアから溢れ出る。
席に着くまでに、約束通りお招きした立花女史、それに藤堂女史、優希ちゃん晃君夫妻の顔が見え、そして部長は雛壇にいる。
今日だけと言えど、こんなに沢山の人に囲まれて主役を務めるのは恥ずかしい。
でも、皆の温かい拍手に迎えられ、スポットライトのあたる雛壇に向かう。
少し高いヒールで慣れない私をしっかり支えてくれるヒサオを見上げると、視線に気づいてニッコリと笑う。
本当にあっという間の一年だった。
『ねえ、式は出会った日にしよう。それともジューンブライドにする?』
『別にいつでもいいよ。』
『でも、誕生日までにしないと三十路の花嫁になっちゃうだろ?』
『そんなこと気にしてない。』
一つ一つ相談して決めてきた。
プロポーズ後もヒサオはちょこちょこサプライズを仕込んできた。
だから、私も…一つだけ…