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私の欠けているところ
第8章 泥沼のような地獄だった


しばらく
時は黙ったままだった


けど時は
俺の腕を振り払って
帰ろうとはせず

俺の脳裏にはる
「断れない性格」
という言葉が
浮かんでいた


帰りたいのか
帰りたくないのか
仕方なく
俺に抱かれているのか
それとも

本当は
ここに居たいのか……


時の本心は
俺には全く分からなかった


でも
それでも
どんな理由でも

時が
俺の腕の中にいることを
そのときの俺は望んでいた





しばらくして
俺の心も落ち着いてきたころ

俺は
時に布団からでないよう
言い聞かせて寝室を出た


それから
とりあえず
あったかいコーヒーを入れて
自分は服を着て

時の下着と
俺のTシャツを持って
また
寝室に戻った


「時…これ…」


着替えを渡すと

時は
黙ったまま
それを身に着け

そしてまた
布団に足を入れた


枕を背もたれにしてやって
時をもたれさせ
コーヒーを渡して
自分も時の隣に座った


静かに

時は流れ

時計の秒針の音だけが

部屋に響いていた



「時…」


「……」


「俺、聞いたんだ…色々」





「…うん」




「気にしてないから」




「……嘘」




「(苦笑)

ごめん

嘘だ」




「いいよ」




「けど」



「……」



「時が好きなのはほんと」







「ダメだよ」





「何が」





「そんなこと

言わないで」





「なんで」





「私は……

…………」





「私は…なんだよ

教えてくれよ」





「………」





「時の事…全部」


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