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私の欠けているところ
第3章 『あいつ』のせいじゃなくて
すると深海さんは
俺から目線を落とし
ワインを一口飲んでから
ほんの少しだけ微笑んだ
「いいね。
そういう人がいると
救われるかも。
けど……
梶谷くん」
「はい」
「それがどうして私なの?」
その時俺は
猛烈に焦っていた
平気な顔をしてるつもりだったけど
実は心臓をバクバクさせながら
とにかく
深海さんを納得させる言葉を
探っていた
そこで思いついたんだ
深海さんが
俺のことを絶対恋愛対象にならないと
思うような事を言えばいいんだって
友達が成立するような
何かを…
「深海さん
すごく話しやすくて優しいのが
一番の理由なんですけど」
「…うん」
「俺と深海さん
歳も離れてるし」
「うん」
「俺…」
「何?」
「男が好きなんで」
言い過ぎた
いくらなんでも
言い過ぎだ
恋愛対象じゃないって
思わせようとはしてたけど
とんでもない嘘をついてしまったと
俺は思っていた
けど
その嘘のおかげで
深海さんの反応は
予想以上にいいものだった