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私の欠けているところ
第5章 その『嘘』に俺は追い詰められ

すると
深海さんの目から
涙がこぼれ落ち
その涙を隠すように
両手で顔を抑えながら
また
うつむいてしまった
「嫌なら…言って」
返事のない深海さんに
そう伝えると
俺は
ゆっくりと深海さんに近づき
深海さんのすぐ後ろに
腰をおろした
そして俺は
嫌だとは言わない深海さんを
まるで
生まれて初めて
人を抱きしめるように
優しく
そして
慎重に
背中から抱きしめたんだ
今でも忘れない
抱きしめた途端
泣き出してしまった深海さんの
背中の温もりも
何かを背負ってるような
寂しい雰囲気も
華奢な肩も
ほんの少しだけ香る
シャンプーの匂いも
うなじから香る
甘い
ミルクのような匂いも
いつの間にか
好きで好きでたまらなくなってた
自分の想いも
深海さんを
助けたくてたまらない
俺の気持ちも
そのうなじに
唇を寄せたいと思った
熱い想いも
全部
忘れてないよ…時

