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私の欠けているところ
第5章 その『嘘』に俺は追い詰められ


…し、してたって…

セックスだよな


正直驚いていた

大人なのに
まるで何も知らないような
そんな雰囲気の深海さんが車で…

いやでも
そのくらい珍しいことでもない

…かもしれない


大人の恋人同士なんだ
セックスしない方がおかしいし
車でくらいするかもしれない


けど
もしかして
…乱暴なことされたんじゃ…


「ごめん、こんな話…」


俺の返事が遅かったからか
深海さんは
話さなきゃよかった…
というような声を出した


「いや、そんな
ごめん、ちょっとドキッとしただけ。
してたって…アレ…だよね?」


コクっと頷く深海さんは
恥ずかしそうに
耳を少し触った


「時ちゃん
もしかして
乱暴なことされたりしたんじゃ…」



「ううん。

そんなことないの。


時間が無くてね」



「時間?」



「うん。

家まで送ってもらう時間無くて
急いで降りてって
駅の近くで言われて

それで多分

私が
どこかで
やぶっちゃっただけ。


それだけなの。


なのに


梶谷くんに
心配してもらって

優しくされたら



泣いちゃって…


ごめんね?


そんなの
いつものことで
泣いたりしないのに


余計な心配

かけちゃったね」




その時俺は
どこから深海さんの間違いを
訂正すればいいのか
迷っていた


金を渡すの
普通じゃない


ヤッてすぐに
車降ろされるのも
どうかと思う


送る時間ないなら
ヤルなよとさえ思う


そんなことを
いつもの事だと言う
深海さん自体

どうかしてるとさえ…



「時ちゃん」


「ん?」



「そんなの
泣いて当たり前」




「…そうかな…」




「時ちゃん」




「…?」





「ごめん

もう一回抱きしめていい?」



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