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第3章 はみ出した口紅
いつもと変わらない朝、いつもと変わらない制服、いつもと変わらない お天気おねえさん。

「おはよう。昨日はどうだった?」

母がちらりと私の顔を見て驚いた。

「どうしたのその顔?!」

昨日は母と顔を合わせたくなくて、すぐにベッドに潜り込んだので、帰宅した母とは会って居なかった。

「うん…昨日派手に転んじゃって…」

おでこにはコブが、頬には擦り傷ができていた。

「気をつけなさいよ。女の子なんだから…」

それよりもお腹の違和感の方が酷かった。まだ涼のものが入っている様な気がしたし、血が出ていて、トイレへ行くたびに沁みた。

「パパから折角貰ったのに開けてないじゃない。プレゼント」

玄関に置きっ放しだったのを母がリビングへ持って来てくれていた。

「うん。ママと一緒に開けようと思って」

そう言って、私は席を立ち徐に包みを開けた。

「あら♪ラップトップ?良かったじゃない」

15インチの軽量で人気の機種。

以前からラップトップが欲しかった。ずっと言い続けていてやっと買って貰ったのは、父が離婚してからだから皮肉なものだ。

「うん」


今日は土曜日。学校は無いし、涼とも会わない。憎しみも悲しみも今は感じない。自分の身体が、自分のものではない様な気がした。

…空っぽになったような自分。

家に居ると息が詰まってしまいそうで、私は町へと出かけた。

…許す?許さない?

そういった次元の問題では無くて、誘惑したというのが本当で、あんなことになってしまったのも自業自得なんだと思う意識の方が今は強かったし、快感を覚えてしまった自分に酷く嫌悪感を抱いていた。

…ママ…ごめんね。

誰にも言うつもりは無い。あんな涼は初めて見たし、好きだと言いつつあんなことするなんて最低だ。

「ねぇ。綺麗なお姉さん?モデルさんか何か?」

突然声を掛けられた。

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