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炎の王妃~月明かりに染まる蝶~
第10章 花と蝶の居場所
 王妃は流れ落ちるオクチョンの涙を手のひらで優しくぬぐった。


 王妃が去った後、オクチョンは改めて気づいたのだった。王妃が初めて我が身を〝淑媛〟ではなく〝オクチョン〟と名で呼んだことに。




 何の移り香か、王妃が立ち去った後、室にはえもいわれぬ芳香がかすかに漂っていた。オクチョンには、それが花の宴の日、王妃と共に愉しんだ白梅の香りに思えてならなかった。

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