この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
VERTEX
第23章 敗北…

今日、負けた事に一番ショックを受けたのは霧島さんなんだから、その霧島さんを静香さんは責めたりなんか出来ないと私にはわかる。
それでも…。
「いっぱい、叱ってもらって下さい。次はもう負けたりは出来ないんですから。」
笑って霧島さんにそう言ってみる。
「だよな。次は負けたりは出来ないな。」
トーナメントを引退をしてもエキシビションマッチで霧島さんはまだ戦う。
レジェンドの扱いで霧島さんはまだ戦えるファイターだというデモンストレーション的な試合を観せてファンを納得させる。
「減量の必要がなくなるから、やっと静香の飯がまともに食えるんだ。」
ホッとした表情を浮かべる穏やかな霧島さんに涙が出そうになる。
ミケの馬鹿!
霧島さんを傷つけて涼ちゃんを泣かせるミケに文句を言ってやると意気込んだ。
「そろそろ、行くぞ。」
会長さんが私達を打ち上げ会場へと促す。
今夜は霧島さんには辛い立場になる打ち上げ会場。
負ければスポンサーさんに頭を下げて回る事になる。
涼ちゃんだって勝ったとはいえ、私の存在を公にしようとしているからスポンサーさんがどんな反応を示すかという不安がある。
頂点になれないファイターに大金を注ぎ込むスポンサーさんは存在しない。
そこはビジネスの世界。
戦って傷だらけにされても、まだ尚、ビジネスの世界で戦わなければならないファイター達が可哀想に思えて仕方がない。
霧島さんだって…、いっぱい戦ったのに…。
涼ちゃんだって…、怪我をしてまでも戦ったのに…。
それでもファイターの小さな我儘すら認めてくれないVERTEXなら…。
そんな世界はこちらから願い下げだ。
涼ちゃんの手を握ったまま、初めて打ち上げ会場の真ん中へと進んでいた。

