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逆転満塁ホームラン!
第15章 幼馴染みの絆

異様な雰囲気だ。
みんな殺気立ってるというか、動物っぽい瞳をしてるというか……。先程のお祭り騒ぎとはまた違う、独特の空気感。
それもそのはず。
『おー、なんと!マルコもピッチャーゴロに終わりました。菅はフライでしたし、これでツーアウトになります。』
菅君は別としても、ここ最近絶好調だったマルコでさえ本気で守りに入っている岩崎君のピッチングに、してやられてるのだから。
何度もピッチャーの元に集まる阪神の選手達の目や顔を見てると、向こうも……もうやっぱり意地があるのだろう。自分たちが相手をしているのに、出来たばかりの球団にリーグ優勝なんてさせたくない、という意地が。
──だけど、私達には天草が居る。
素振りをする事なくベンチでずっと膝に腕をつき、下を向いていた天草が宮田姉さんの声を聞き、我に返ったのか自らのバットを持ってバッターボックスへ歩き出す。
『天草ー!大丈夫だ、振り切れー!』
『ホームラン!ホームラン!』
『天草くーん、頑張ってー!!』
老若男女、様々な声が聞こえるけれど、その全てが天草への応援だと言うのだから、ああ泣けてくる。
『さすがに監督も代打は使わなかったみたいですね。』
『当たり前です、村田さん!!今日の天草の調子は別としても天草は日本の四番なんです!!そりゃ……ここで使わなかったらどこで使うんですか?!』
ファンの気持ちを代弁してくれている白井さんって、きっと実況なんかより家でお酒片手にゆっくり見たかっただろうな……。
『さあ、天草がバッターボックスに入りました。』
『これで延長に持ち込むのか……それとも繋いで試合を終わらせリーグ優勝を手にするのか。』
『こんなドラマの様なストーリーには、ドラマの様な人物が似合います。──ウィングスが世界に誇る四番、天草流と阪神の守護神岩崎の本気の戦いです!!』

