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第4章 :jealousy-嫉妬-

　あれは嫉妬だったのかしら？
　昨日の話が夢だったのかと思われるくらいに、今は現実的な朝。
　セックス専用ロボットを相手に欲を発散させていた彼。その話を聞いた後、私の中には何かしらモヤモヤとした感情が存在していた。その後に『E地区』の男は『ヒト』の女にしか触れられない為に、自分の決まった相手に会うまではそれで男の中にある欲を出しているのだそうだ。それは仕方のないことだとしても、やはり私がスッキリとした気持ちになるにはかなりの時間を費やしていた。その嫉妬の感情がそうさせたのかどうかは分からないが、
「私の身体をそれと同じだとは思わないでっ！　『ヒト』の女性の身体はとぉっても繊細で傷つきやすいの！」
　と文句を伝えると、
「セックス専用ロボットも傷つきやすい。あまり激しくするとショートする上に正常じゃなくなるから攻撃的になる。セックスをする時にはキスを絶対にしてはならないというルールもあるしな」
　ロボットと自分の身体を同じように思われていると絶句をしながらも、彼の最後の言葉に私はハッとして片掌を唇に当てた。その仕草を見ていた彼が首を傾げる。
「どうした？」
　どうしたもこうしたもない。私は恐る恐る問いかけてみた。
「あの、キスをしてはいけないルールって……　それは『A地区』の全てのロボットに当てはまるんですか？」
　私のその問い掛けに彼も少しだけ目元を変化させる。
「そういえばあんた、あれとキスをしていたよな？」　
「み、見ていたんですか！？」
「あの日、初めて会う予定にしていたからな」
　つまり、私に会いに『H地区』のこのマンションの前まで来ていた彼は、偶然にも私とあの『モノ』がキスをしているところを目の当たりにしてしまったのだ。しかし『モノ』がロボットなんだって知らなかった私だ。キスをしてはいけないなんてルールも知るはずもなし。それにあの時は確認をしなければならないこともあったから、仕方のないことでもあったのだけれど、目の前の彼の表情は微かながらにも複雑そうだ。それに私もなぜここで慌てないといけないのだろうかと思いながら、必死に言い訳の言葉を頭の中に浮かべては喉奥へと下ろして口外へと押し出していた。
「あのですねぇ……　あれはあのぉ、少し私の中にある疑問がありまして……」
「疑問？　何の？」