この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
その匂い買います
第1章 その匂い買います

── 中塚はホテルを後にした。
中塚が女性の足の匂いに興味を持ち始めたのは、小学生の水泳の時間であった。男女が体育館で準備体操をしている時に、女子生徒が両足を広げて座り、上体を倒して体操をしている時に、足の裏が丸見えになった。中塚は一瞬、心臓が止まりそうになった。その足の裏は、柔らかそうで赤らみ、桃のようで舐めたらおいしそうだったからだ。そんな猥褻な感情が、中塚少年の心に宿った。そして、もう一つの記憶は、中学生の時、クラスの陸上部の女子生徒が、中塚の席の斜め前で、中塚の方に向かい、右足を左の膝に乗っけながら、靴下を脱ぎ、そして素足になった瞬間に、中塚の中で何かが蠢き始めた。その女子生徒の素足は、10代の少女らしい、初々しいほどの熱を帯びた肌で、指でつつけば肉まんのようにやわらかそうな皮膚だった。そして中塚の嗅覚には、その少女の匂いが届いた。
中塚の頭の中は真っ白になっていた。
言葉に出してはうまく言い現わすことが難しかったが、脳裏にゆらめく、目眩にも似た衝撃に、ある種、快楽的な欲求を覚えていた。周囲の者たちにはけっして、その匂いが届くことはなかった。中塚だけが少女の足の匂いを感じたのである。それ以降、中塚は女性の足の匂いに対して、異常なまでに、性的興奮を覚えるようになっていた。普段見えない場所だけに、観てみたいという欲求がこみ上げていた。
だが、こんな性癖を持ち合わせているという事は、親友の三崎すら知らない。中塚は温厚篤実で、社内では評判の男だ。しかし、それは世間の中塚に対する評判であって、けっして中塚の人間性を、みつめているわけではなかった。
自宅に到着し、そのままテラスに出る。
時刻は十六時を回った辺り。今日出会った、人妻『翔子』の匂いをおぼろげながら思い出していた。
「匂いは薄目だったな」
匂いを買うという行為は、いったい世間的にはどのような評価なのであろう。買春や売春などは、法に抵触するが、匂いを買うという行為は、このような行為と同一視をされるのだろうか。中塚は畳の上に胡坐をかいて、頬杖をつきながら、そんな事を考えて、時間を潰していた。
中塚が女性の足の匂いに興味を持ち始めたのは、小学生の水泳の時間であった。男女が体育館で準備体操をしている時に、女子生徒が両足を広げて座り、上体を倒して体操をしている時に、足の裏が丸見えになった。中塚は一瞬、心臓が止まりそうになった。その足の裏は、柔らかそうで赤らみ、桃のようで舐めたらおいしそうだったからだ。そんな猥褻な感情が、中塚少年の心に宿った。そして、もう一つの記憶は、中学生の時、クラスの陸上部の女子生徒が、中塚の席の斜め前で、中塚の方に向かい、右足を左の膝に乗っけながら、靴下を脱ぎ、そして素足になった瞬間に、中塚の中で何かが蠢き始めた。その女子生徒の素足は、10代の少女らしい、初々しいほどの熱を帯びた肌で、指でつつけば肉まんのようにやわらかそうな皮膚だった。そして中塚の嗅覚には、その少女の匂いが届いた。
中塚の頭の中は真っ白になっていた。
言葉に出してはうまく言い現わすことが難しかったが、脳裏にゆらめく、目眩にも似た衝撃に、ある種、快楽的な欲求を覚えていた。周囲の者たちにはけっして、その匂いが届くことはなかった。中塚だけが少女の足の匂いを感じたのである。それ以降、中塚は女性の足の匂いに対して、異常なまでに、性的興奮を覚えるようになっていた。普段見えない場所だけに、観てみたいという欲求がこみ上げていた。
だが、こんな性癖を持ち合わせているという事は、親友の三崎すら知らない。中塚は温厚篤実で、社内では評判の男だ。しかし、それは世間の中塚に対する評判であって、けっして中塚の人間性を、みつめているわけではなかった。
自宅に到着し、そのままテラスに出る。
時刻は十六時を回った辺り。今日出会った、人妻『翔子』の匂いをおぼろげながら思い出していた。
「匂いは薄目だったな」
匂いを買うという行為は、いったい世間的にはどのような評価なのであろう。買春や売春などは、法に抵触するが、匂いを買うという行為は、このような行為と同一視をされるのだろうか。中塚は畳の上に胡坐をかいて、頬杖をつきながら、そんな事を考えて、時間を潰していた。

