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振り向けば…
第4章 笑ろたれや…
帰りのバスで悠真が私の頭を撫でて苦笑いをする。
「笑ろたれや…。」
「笑われへん。」
「でもオッチャンが手術する時に来夢の泣き顔しか思い出されへんのは可哀想やろ?」
手術の時は麻酔で寝てるからなんも考えへんわい。
悠真に文句を言いたくなる。
「来夢がずっと笑ってるんがオッチャンの生きる希望ってやつやぞ。」
悠真の言葉は理解出来ても実行するのは難しい。
「悠真のアホに呆れて笑われへん。」
「俺のせいにすんなや。」
悠真が口を尖らせる。
こういう時だけ悠真もまだまだ子供だと感じる。
ただ寂しかった。
お父さんが居ない我が家がとにかく寂しくて耐えられなかった。
だから、用事もないのに学校から帰ると悠真を呼び出す日が始まった。
勉強をしながら私のベッドで漫画を読む悠真と話をするだけの毎日。
「悠真も勉強しろや。」
「学校でやってるやん?」
「どこの高校に行くつもりやねん?」
「さあな…、私立は無理やから公立のどこか…。」
アホやから、行く高校があるのかと心配になる。
私はとりあえず今のままの成績がキープ出来るなら目標高校は大丈夫だと言われてる。
それでも不安になるから夏休みは昼間にある夏期講習にだけは行った。
うちの学校じゃ塾に行った事がない子は私と悠真くらいで皆んなが塾に行く。
そんな状況だから、気持ちが焦って毎日学校から帰ると勉強ばかりする。
塾に行った方が良い?
だけどお父さんが入院をしてて家の事は私がしなければならないから塾に行く時間がない。
学校から帰ると洗濯を取り込んで畳み、買い物に行ってご飯を洗う。
お母さんの仕事が遅いと私が晩ご飯を作る。
お弁当も私が作る。
弟の来人がまだ給食だから私とお母さんと悠真の分のお弁当を用意する。
塾に行きたい。
それが言えない受験生を私はやってた。