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旧家のしきたり
第2章 嫁試し
「昔からこの地方では、妻女たちが互いの家をまわり、その家の主と交わることで家と家の絆を深めてきました。そうして築かれた強い絆が、蔵森家を400年支えてきたのです。さすがに今は、そういうことを普段行うことはなくなりましたが、蔵森家の妻には、いざという時には、そういうことができるという覚悟が必要です。

先ほど、私は、あなたたちにこの家の決まり事の中には、女性に屈辱を強いるものがあると説明しました。それを聞いた上で、美穂さんは、どんなことでも我慢できると言いましたね。優斗もどんな試練も耐えられると言いました。本当にそうであれば、『嫁試し』も乗り越えられるはずです」

母は、ここで一呼吸おいた。どうしたの、さっきまでの勢いは、というような顔で僕と美穂の顔を見つめる。

「3日間、美穂さんには、御三家の3人と順番にまぐわってもらいます。優斗には、黙ってそれを見守ってもらいます。

二人の結婚が許されるには、3つの条件を満たさなければなりません。

1つ目は、御三家全員が美穂さんを嫁に迎えることを承認すること。美穂さんは御三家の皆さんに気に入られるよう努力しなければなりません。

2つ目は、『嫁試し』が行われる3日間、優斗が男の精を漏らさないこと。優斗は、男としての欲望に耐える努力をしなければなりません。

3つ目は、『嫁試し』の3日間が終わったあとも二人が好き合っていること。

この3つが満たされれば、二人の結婚を認めましょう」

「そんな、ばかな……」

僕は、その場に崩れ落ちた。隣では美穂が両手を顔にあてている。

「早速、今日の夜から始めます。みなさん支度をしてください」

母は、いつもと変わらぬ表情で言い放つと席を立った。
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