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第8章 とまどい

兄の孝介は愛先輩のことを「愛」と呼んでいた。

「先輩」という単語を取るだけで、彼女の名前はとても魅力的に感じるのは気のせいか。

そういえば、愛先輩は香水が好きだといった。

幼い頃、お姫様に憧れ、香水に興味を持ったと話していた。「シャネル」というブランドがお気に入りだという。

何気なく天井を見つめると、薄く広がったシミが愛先輩の顔に見えてくる。

慌てて頭を振りながら起き上がった。

ベッドに腰掛け室内を眺める。

白色を基調とした壁にはポスターなどはなく、東側には三人掛けの皮製のローソファが、そして西側には、勉強机の横に漫画本や陸上関連の書籍などが入れられた書棚と木目調のアンティークチェストが置かれている。