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郁美の真実 〜妻を閉じ込めた魂の檻〜
第12章 〜郁美の彷徨〜
男は射精すると間も無く、郁美をその場に残し、足早にその場を立ち去った。

郁美は恐怖から、しばらくその場を離れることができなかったが、なんとか恐怖から回復すると、自力で家へ帰り着いた。

郁美はこの恐怖と恥辱に満ちた経験から、やっとふらふらと繁華街をさまようようなことをやめた。

しかし郁美は認めざるを得なかった。

自分は歪んだ性癖を持っている。

「自分はけがれた存在だ」と思った。

これ以後、郁美は自らを危険に晒す行動をとらなくなったが、性的に悶々とした日々を送った。

ただ、郁美にとって一番大切なのは両親の心の平穏だった。

郁美は両親の前で、ひたすら明るく努め、勉強に励み、志望していた有名私立大学に進学した。

大学に入るまで女子校通いだった郁美も、共学の大学に進学したことで、普通の恋をした。

相手は同じサークルの先輩で、思いやりのある優秀な人物だった。

元来、明るくひとなつこい性格の郁美は、男性からの受けもよく、先輩と恋人として付き合うことができた。

付き合いは順調で、2年ほど交際が続き、彼の誠実で優しい人柄から、郁美は彼を心から信頼するようになっていた。

かつて、一生自分だけの秘密としておこうと思っていた過酷な経験。

その経験による心の傷を、彼ならば癒してくれるかもしれない。

これから一緒に背負っていってくれるかもしれないという期待が芽生えた。

郁美は迷ったが、彼に自分の過去を打ち明けたのだった。

彼はけっして郁美の存在を否定しなかった。

郁美の、人としての尊厳を傷つけることもなかった。

だが、二人の関係は、以前のような自然体ではなくなってしまった。

誰が悪い訳でもない。

しかし、二人の間の空気が変わってしまい、付き合いは息苦しいものとなってしまった。

結局郁美は彼に気を遣い、二人に別れが訪れた。

彼が悪い訳ではない。

郁美は、「やっぱり、わたしの存在はけがれたものだ」「もう二度と誰かに過去のことは話さない」そう心に誓って、深く傷ついた。

.....

これが、郁美の過去の秘密の全容だった。
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