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セイドレイ【完結】
第25章 暗転
「──流産した…と?」
「ああ…昨夜処置した」
クリスマスの翌日、12月26日。
武田家の一室では、神妙な面持ちで向かい合う新堂と雅彦の姿があった。
「──まぁ正直、無理もない。妊娠初期でもお構いなしに膣への挿入を強要されていたんだ。おまけに、母体である亜美が抱える精神的なストレスも相当なものだろう。前回と同じだ。今回も育たなかった」
雅彦は、亜美がまたしても流産してしまった──と、新堂に伝える。
「そうか…。こればかりは仕方がないが…しかし会員たちへの説明をどうするか…」
「会員たちは妊娠していたことを知っているのか?」
「いや…。こんなこともあろうかと、まだ正式にはアナウンスしていない。で、今亜美はどうしている?」
「安静にしているよ。せめて、新学期が始まるまでは休ませてやりたい。幸い、ここ数日は予約がなかったが…年末年始にかけてちらほら入ってきているだろう?なんとかならんか?」
「そうだな。時期が時期だけに、今入ってきている予約は仮のものばかりだ。早急に会員たち連絡して、取り消すとしよう。受付再開は新学期からでいいんだな?」
「ああ、それでいい。助かるよ…」
亜美を休ませてやりたいという雅彦の要求を、あっさりと了承する新堂。
「──となると、水野との件をどうするかだな。雅彦、お前はどう考える?」
新堂は、数日後に控えた "貴之による謝罪" について、亜美が流産してしまったことをどう扱うか、雅彦に意見を仰ぐ。
新堂が他人に助言を求めるなど、珍しいことだ。
わざとそうすることはあっても、そういう場合は大概、新堂の中ではすでに答えが決まっていることがほとんどである。
「──ワシか?そうだな…。こちらの要求としてはあくまで謝罪だろう。それに、もともと堕ろす前提の話だ。言おうが言わまいがどちらでもいいような気がするが…」
「ククッ…そうだなぁ。たしかにそのとおりだ。『本 当 に 妊 娠 し て い た』のなら、流産しようがしまいが、謝罪はしてもらわんとなぁ」
新堂の含みを持たせたその口ぶり──雅彦は一瞬、怪訝な顔をする。
「──お前、なにが言いたい?」
「いや…?私は例え話をしたまでだよ。まさかお前がこの私に向かって『亜美が妊娠したことにして実は嘘だった』なんてこと、するはずがないからな。ククッ…クククッ────」