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セイドレイ【完結】
第26章 形勢
亜美を一人、田中の部屋に置き去りにしてきた慎二は、田中に借りた車を走らせ近くのコンビニまでやって来た。

駐車場に車を停め、おもむろにスマホを取り出すと、『タカ』とやり取りをしたメールを遡って見ていく。

「えーっと…あ、あったあった、これこれ…」

メールに添付されている画像データを保存すると、慎二は次にアプリを検索する。

田中が言っていた、画像のEXIF情報を読み取るためのアプリを探し、いくつかの候補の中から良さそうなものを一つ選択すると、ダウンロードをタップした。

慎二が亜美を置いてきた理由は、どうしてもこのことが気になっていたからだった。

誘拐されかけた直後の割に、亜美はどこか落ち着いて居たように思えた。
そればかりか、自ら進んで田中とのセックスを続行したいと言った。
確かに亜美はこれまでも、たまに突拍子も無い言動をすることがあるので気のせいかもしれない。

どちらにせよ、慎二は亜美がさらわれた時の事が、数時間経った今でもその脳裏に鮮明に焼き付いていた。

人生であれほどまでの焦りと恐怖に慄いたのは初めてだった。

だから、慎二はどうしてもタカの居場所を突き止めたかった。
こうしてタカの居場所を特定する手立てがあるということは、相手も同じことができるということでもある。

また、亜美を田中に預けてきた理由は他にもあり、単純にそうしてもいいと思ったからだ。
慎二にとって、今や田中という男は数少ない理解者になっていた。
いや、たった一人と言えるかもしれない。

ネットで知り合い、顔を合わせるのは今日が初めてだったが、歳下である自分のことを『師匠』と呼び慕ってくる田中に、これまで友人など居なかった慎二は心を許し始めていた。

そんな友人の『脱・童貞』の門出に花を持たせようと、二人きりにする時間を設けた意味もあったのだ。

ダウンロードが終わり、アプリを起動する。
アプリの仕様は単純なもので、任意の画像を読み込むと、その画像に記録されている撮影日時や位置情報等の『EXIF情報』が表示される仕組みだ。

位置情報に関しては、その緯度と経度がマップ上に表示され、対象の画像が撮影されたおおよその場所を特定することができる。

慎二は、そう遠く無ければこのままその場所へ行ってみるつもりでいた。

アプリがマップ上にその位置情報を示すと、慎二は自分の目を疑った。
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