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セイドレイ【完結】
第28章 功罪
一方、田中の家を後にした健一達の三人は、亜美の失踪について何の手がかりも掴めないまま、自宅方面へ向け車を走らせていた。

すると、健一のスマホに、雅彦から着信がある。

「…もしもし?俺だけど……え?……………分かった。すぐ戻るわ…あ、そうそう、今慎二も一緒に居るから。はいはい、はーい」

短い電話を切った健一に、慎二が話しかける。

「親父、何だって…?」

「…よく分かんないけど、これから新堂のおっさんが家に来るらしい。だから戻って来いってさ」

「そ、そっか…親父…どうすんだろ…」

健一と慎二は、亜美が失踪したきっかけを作ったのが慎二であるということを、この後雅彦には話すつもりでいた。

しかし、そのことを新堂に知られるのはまずい。
そもそも、雅彦は亜美が消えたことを新堂に言うつもりなのだろうか。

二人がそんな会話をする中、一人事情を知らない貴之が後部座席から話に割って入る。

「…新堂って……うちの学園の理事長ですよね?この前、うちの親との話し合いの時にも同席してましたけど…あの人って…一体どういう関係なんすか?」

いくら雅彦の古くからの友人とはいえ、前回の話し合いの時もその場を仕切っていたのは新堂だった。
彼が亜美や貴之の通う学園の理事であるということを差し引いても、新堂と武田家の間には何かただならぬ事情があるように思える。


「お前はもう…これ以上首を突っ込まない方がいい。それにこんな状況だ。明日の話し合いもどうなるか分かんねーしな。とりあえずこのまま送ってくから、今日は帰れ」

健一は貴之に帰宅を促す。

「で、でも……俺も…亜美のために何かしたい…それに、あんた達に聞きたいことだってたくさんある…!」

そう歯を食いしばる貴之だったが、健一がそれをたしなめる。

「…とにかく、今俺らとお前が一緒に居ることを知られたらややこしいことになる。亜美の状況については、俺からお前に連絡してやるから、連絡先教えとけ。亜美が見つかってから、話ならいくらでも聞いてやるよ。今日はもう遅いし、親も心配してるだろ?」


健一はそう言って貴之と連絡先を交換し、自宅まで送り届けた。
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