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セイドレイ【完結】
第28章 功罪
その証拠に、新堂はこの日、亜美の捜索に関して具体的なことを一切言わなかったし、雅彦達にも聞かなかった。

仮にも身内である武田家の人間に、聞き取りさえ行われない。
誰がどんな方法で亜美を捜索するのかすら、雅彦達は知る術が無い。

捜査内容を明かすことができない、と新堂は言ったが、確かにそれは仕方ないことなのかもしれない。

しかし今後、亜美について雅彦が知らない事実を、新堂は知ることができるのだ。

すなわちその事実をどう曲げようが、新堂の思うままということになる。

雅彦はどうしてもそれを避けたかったのだ。

実は既に亜美は見つかっているのではないかとさえ思う程、雅彦は新堂のことを信用していなかった。

しかし、亜美を取り巻く全ての状況を勘案すると、その命を優先するならば新堂の力を借りるしか無いという雅彦の苦渋の決断だった。

そもそも亜美が姿を消した時点で、既に雅彦は亜美に対して何の力も無くなってしまったと言えよう。

どうせ何もかも失うのであれば、正式なルートで亜美を捜索してもらう煩わしさよりも、より最短で確実な方法を雅彦は選んだ。


「…ということだ。亜美が発見されたら、その時はすぐに連絡するよ。君たちは、あくまで表向きは普段通り生活してほしい。大丈夫だ、まだ望みはある。私の知り合いは優秀だからね。ありとあらゆる手を尽くしてくれるだろう。もしかしたら『もう見つけてくれている』かもしれん。いいかい?あくまで普段通りだ。…では私はそろそろ…」


『もう見つけているかも』


雅彦はこの言葉が妙に引っかかった。
新堂がわざわざこんなことを言う時は、大概裏に何かある。

しかし、今はその言葉にすがるしかないのも事実だ。

すると、帰ろうとする新堂を、健一が呼び止める。

「あ、おっさん!…ちょっといい?明日の…水野家との話し合いはどーすんだ…?当事者の亜美がいない状況で…」

「ああ…それに関してはもう手を打ってある。水野…彼には今まで通り我が校に残ってもらうことにする。既に先程あちらの両親にも話をつけてある。もちろん、慰謝料等も全く要求していないよ。円満な和解だ。とんだ茶番だったがね…ちょっと私も亜美が消えたことで、思う所があってねぇ…」

意外な展開に健一と慎二は驚いたが、亜美が居ない今、余計なところで波風を立てたくないのだろうと思い、納得しようとした。
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