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セイドレイ【完結】
第53章 落日
静かな夜だった。

カーテンの隙間から漏れ入る月明かりだけが、罪深き2人を照らしていた。

何も無い和室に敷かれた、1枚の布団。

お互いの罪を持ち寄るかのように、2人はカラダを重ね合う。

ここには、何も介在していない。
喜びも悲しみも。
幸せも不幸も。
美しいも醜いも。

正しいも間違いも、ない。

あるのは、求め合うふたつのカラダだけ。

そんな、熱く、静かな夜だったーー。



「...どうしてだ?」

「何が...でしょうか?」

「...どうしてワシを待っていたんだ?と聞いている」

「どうして、って.....」

「...お前は何か勘違いをしているな。これは愛などでは無いぞ。ただのまやかしだ。それに、お前はもう独りじゃない。もうワシなどに構うな...」

「...でも、それじゃあ...お父様が独りになっちゃう」

「ふんっ...それは憐れみか?ワシは別にそれで構わん。死ぬ時はどうせ独りだ」

「...嘘」

「...何?」

「...素直になって、お父様」

「.....やめなさい。ワシがお前に...何をしたか分かっているのか...?」

「私も素直になるから」

「...やめないか」

「もう何も迷ってない」

「...こら。あまりワシを困らせるな.....」

「...お父様。愛してる」

「ダメ...だ。そんなことが...許されるわけなかろう...?」

「...うん。許さない。私はお父様を許したこと、一度だってない」

「...ならどうしてそんなことを言う?」

「...そんなこと?」

「あぁそうだ。ワシが許せないなら、どうして愛など口にする?」

「簡単に...独りになんかさせない」

「何...だと?」

「だから見ていて、近くで」

「...何をだ?」

「私を。私だけを。これからもずっと」

「...ワシに...どうしろと言うんだ...?」

「私が他の誰かを愛するのを、そして愛されるのを。そばで見ていて」

「何を言って...」

「お父様には、私しかいないでしょ?」

「.........」

「ねぇ、お父様」

「さっきから何なんだっ...」

「言って?」

「...だから、何をだ...」

「私を愛してる、って」

「...そんなこと...言えるわけ...言っていい訳が.....」
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