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第17章 空が白んでく…。

『もう………やめてくださいませんか？　孝は、そんな中途半端な気持ちで私を貸し出してませんから…』と
動画から美緒がの声が聞こえた



クロガネのスマホのカメラが
美緒の表情を写す…



孝は
月明かりの下で
クロガネに何やら
語りかける美緒の表情の
艶めかしさに
思わず画面を食い入るように眺めはじめた…。



美緒は
ゆっくりと優しげな声で
しかし芯の強さを感じさせる言葉遣いで
クロガネに諭すように
孝と美緒の夫婦関係と
二人の絆の強さを説明していた。



………………美緒っ！

孝は
気がつけば
涙を鼻水を垂らしながら
その美緒のコトバを聞いていた。


そして
動画が切れた。




美緒は
俺の心のなかをすべてお見通しだったんだ
女性として
妻として耐え難いことでも
それで旦那である俺が
喜ぶならと…
妻に対する変な劣等感を持たなくなるならと…
何も言わずに
俺の性癖を満たそうとしてくれたんだ。




孝は…
かすかに白み始めた
東の空を窓際から眺めた。


そして
『今日、美緒が…帰ってきたら、美緒が大好きな【アンナ=ベルジュール】のケーキ買ってお迎えしてあげようかな………』
孝は
そう窓の外を眺めながら呟いた

美緒への感謝とともに。