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せめて、今夜だけ…
第11章 罰は蜜の味


こんな状態を誰が予想出来ただろう。


「まさか安西さんと魚塚さんが知り合いだったなんて。世間は狭いですね!」
「私も驚きましたよ!翔太さんの婚約者さんと魚塚君が知り合いなんて」

「……。」
「……。」

俺と風間先輩、魚月と婚約者の翔太、何なんだこの状況は。

俺は魚月の古い友人ということになっている。
思いがけない繋がりがわかり風間先輩と翔太は笑い合っているが、俺と魚月の表情はどこか固い。
俺はある程度の覚悟が出来ていたが、魚月からすれば晴天の霹靂だろうな。

ここは都心の高級レストラン。
出される料理はコース式だし、出てくるワインも高級品。
魚月の婚約者の翔太が予約した店らしいが、さすがは市原グループの御曹司だ。
丸いテーブルを囲みながら談笑しているようには見えるが、何も知らない先輩と翔太は楽しげ。
反対に、俺と魚月は気まずい空気。

出されたワインや料理に手は付けるが、俺と魚月は味わう余裕なんかない。
どんなに飲んでも酔えない。

「翔太さん、今日はお父様は?」
「誘ったんですが、忙しいみたいで。でも、今後会社を継ぐ為に勉強して来いと」

にこやかに話す翔太だが、随分と猫を被ってるようだな。

「でも、今夜は仕事の話しは抜きで無礼講にしましょう」


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