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せめて、今夜だけ…
第12章 蛹、羽化の時
「この間は中途半端なところで終わっちまったしな」

開脚されてた魚月の足の間に体を滑り込ませ、恐怖で小さく震える魚月の頬に触れた。

「ひっ…」

恐怖が限界に達しているのか、頬に触れただけだというのに魚月の体がビクッと強張ってしまう。
相当嫌われて怖がられているようだな…。

「最低…、最低最低最低っ!!」

魚月の声が部屋いっぱいに響きコンクリートの壁に反響している。
嫌でも俺の耳に入って来てしまう。

「好きなだけ叫べばいい。ここは防音設備は万全だし、お前の声が外に漏れる事もねぇから」

つまり、助けを呼んでも無駄だということだ。
防音設備が不十分じゃラブホテルとしては成り立たないだろう。
ニヤッと笑う俺の口許を見て、魚月の恐怖も苛立ちも悔しさも頂点に達した。

「ど、どうしてこんな事…っ」




――――――どうして?

どうしてこんな事をするのか、と?

魚月のそばにいたい。
魚月との関係を切りたくない。
翔太と結婚して、俺との関係をなかった事にされるぐらいなら、魚月に消えない爪痕を付けたい。

そんな自分勝手な想いだけで、俺は魚月を泣かせて傷つけてる。

だが、俺だって自分が怖い。
どうしてこんなに想いを止められないのか…。

そんなもの、俺が1番知りたいさ…。


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