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せめて、今夜だけ…
第1章 ルール
高校二年生の時、人生で初めての彼女が出来た。
同じバスケ部の先輩マネージャーだった。
誰もが憧れてたマドンナで手の届かない高嶺の花のような人。
そんな人がまさか自分に告白してくれるなんて…、自分の彼女になってくれるなんてと、俺はすっかり有頂天だった。
一緒に登下校したり、休みの日はデートしたりとそれなりに恋人らしいこともして来たし幸せだった。
俺も、先輩に嫌われないように自分なりに努力はしていたつもりだった。

しかし、冬休みを迎える前に俺はアッサリ振られてしまった。

『魚塚君って、顔はかっこいいんだけど、何考えてるかわかんないし、正直一緒にいてもつまんないのよね』

そう言って先輩は俺を振り、さっさと年上の男性と付き合い始めた。

もうあんな想いはしたくない。
ショックのあまり何も手に付かなくなるようなあんな惨めな想いは―――――――。








―――――「おいっ、魚塚!お前キョーコちゃんの事振ったんだってな~っ!」

苦い失恋から数年が経ち、俺も今では32歳の社会人になっている。
そして、社食で昼飯を食べている俺に大声で詰め寄っているのは、同僚の桐谷だ。

「キョーコ?」
「先週、お前に告白して振られたって社内中の噂になってるぞ!」
「あぁ、あの受付嬢の…」

先週、社内メールで受付嬢に屋上に呼び出されたな。
昼休みに、誰もいない会社の屋上で告白されたのは覚えてるが、相手の名前までいちいち覚えていない。

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