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最後の恋に花束を
第7章 大学二年の夏

あの日から数ヶ月が経ち、夏がやって来た。
大抵の大学生は夏休みに入ると、遊びの予定やアルバイトなどで忙しない日々が続く。私もそんな大学生の一人だった。
遙との関係はというと。
あの日以来、顔を見てまともに話す事が少なくなった。けれど、学校で会えば挨拶はするし、街中で見かけた時にも " 普通の友達関係 " であった。
だから夏休みに入ってからは、特にこれといって会うことは無いだろう…なんて勝手に考えていたある日。
ー やっほー、元気? ー
スマホのアプリを開くと、その言葉が並んでいた。
送信元は、ヒロだ。
ヒロとは講義が被ることも多く、たまに昼ご飯も一緒に食べるような関係になっていた。連絡を取り合うほどではないが、会えば長々と一緒の空間に居ることが多かった。
ー うん!ヒロくんは? ー
そう返事を打つとすぐに既読が付く。
ー 元気!急なんだけど8月の2日と3日空いてる? ー
ー 空いてるけど、 どうしたの? ー
今日は7月の25日。本当に急だなと思いつつも、バイトは入っていなかったのでそう返信を打った。
ー ハルが泊まりで海行こうって ー
そのふた文字に心臓がドキリと跳ね上がる。返信に詰まったの私を急かすように、再びヒロからメッセージが送られてきた。
ー 俺と遙とカナちゃんと、ユミちゃんで ー
その文字を見た瞬間に、胸がズキっと痛むのがわかった。
" ユミ… "
彼女の顔が、怒った表情が、
少し悲しんでいる表情が、
誰にでも優しく笑っている美しいあの表情が。
一気にフラッシュバックする。
それと同時に思い起こされるのは、あの日のホテルでの出来事。彼の優しい表情。彼の綺麗な素肌。指先。色っぽい表情。
" … ユミさんと一緒かぁ "
心の声が頭の中で鳴り響く。
正直、彼女には会いたくない。
けれど、この誘いを断れば彼との関係も崩れてしまいそうな感覚に陥った。
ー いいよ。行く。楽しみにしてる ー
気が付けば、私はヒロにそうメッセージを送っていた。胸が締め付けられるのを充分に感じながら。

