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エメラルドの鎮魂歌
第7章 木漏れ日の道
八雲は、冷ややかな眼差しで見返した。
「まさか…。瑞葉様はそのようなことを仰ったこともありません。
瑞葉様は大変な人見知りでいらっしゃいます。
外の世界へ出てみたいなどと思われるはずがありません。
…瑞葉様は、純粋無垢なお方です。それは醜い外の世界をご存知ないからです。
雑多で穢らわしい外に出られた瞬間に、きっとお心を痛めて傷付いておしまいになるでしょう」
…外に出た途端、邪心に塗れた下劣な人間が我先に瑞葉に近寄り、穢そうとするのだ…。
…あの有島のように…!
鋭い銃声…石のように重い死体…深く掘った穴…冷たい土の中で眠る有島…。
…私は少しも後悔してはいない。
瑞葉様に触れようとする者は、私が全て排除する。
「…八雲?どうした?」
訝しむ青山の表情に、はっと我に帰る。
感情を押し殺し、青山に新しいブランデーを勧める。
「…とにかく、瑞葉様はここにおられるのが一番安全でお心が休まれるのです。
ここならば、私がいつでもお守りして差し上げられます。
外の世界に行かれる必要はありません」
「…本当に?」
「…はい?」
「本当にそう思っているの?」
振り向くと、いつもの悪戯めいた人好きする表情はなりを潜め、真っ直ぐな…ややたじろぐような強い眼差しで八雲を見つめていた。
「…君は瑞葉くんの為にと言いながら、自分が彼をここに閉じこめたい…いや、もっと言えば自分だけに隷属させたいと思っているのではないか?
…君の瑞葉くんへの執着は度を越している。
ここに二人で棲まうようになってそれは益々加速しているように見えるのだよ」
八雲は冷ややかに笑った。
「藍様をご養子にされた貴方に言われたくはありませんね」
ブランデーグラスを卓に置きながら、肩を竦める。
「私は藍が新しい世界に旅立ちたいと願うなら、喜んで受け入れるよ。
愛する者の成長は何よりの喜びだ。
…しかし、君はそうではない。
君の愛は、瑞葉くんを雁字搦めに繋ぎ止めるだけだ」
無言の八雲に、青山はあたかも祈りの言葉のように静かに告げた。
「…君の愛が君たち二人を滅ぼさないように、願うばかりだ…」
「まさか…。瑞葉様はそのようなことを仰ったこともありません。
瑞葉様は大変な人見知りでいらっしゃいます。
外の世界へ出てみたいなどと思われるはずがありません。
…瑞葉様は、純粋無垢なお方です。それは醜い外の世界をご存知ないからです。
雑多で穢らわしい外に出られた瞬間に、きっとお心を痛めて傷付いておしまいになるでしょう」
…外に出た途端、邪心に塗れた下劣な人間が我先に瑞葉に近寄り、穢そうとするのだ…。
…あの有島のように…!
鋭い銃声…石のように重い死体…深く掘った穴…冷たい土の中で眠る有島…。
…私は少しも後悔してはいない。
瑞葉様に触れようとする者は、私が全て排除する。
「…八雲?どうした?」
訝しむ青山の表情に、はっと我に帰る。
感情を押し殺し、青山に新しいブランデーを勧める。
「…とにかく、瑞葉様はここにおられるのが一番安全でお心が休まれるのです。
ここならば、私がいつでもお守りして差し上げられます。
外の世界に行かれる必要はありません」
「…本当に?」
「…はい?」
「本当にそう思っているの?」
振り向くと、いつもの悪戯めいた人好きする表情はなりを潜め、真っ直ぐな…ややたじろぐような強い眼差しで八雲を見つめていた。
「…君は瑞葉くんの為にと言いながら、自分が彼をここに閉じこめたい…いや、もっと言えば自分だけに隷属させたいと思っているのではないか?
…君の瑞葉くんへの執着は度を越している。
ここに二人で棲まうようになってそれは益々加速しているように見えるのだよ」
八雲は冷ややかに笑った。
「藍様をご養子にされた貴方に言われたくはありませんね」
ブランデーグラスを卓に置きながら、肩を竦める。
「私は藍が新しい世界に旅立ちたいと願うなら、喜んで受け入れるよ。
愛する者の成長は何よりの喜びだ。
…しかし、君はそうではない。
君の愛は、瑞葉くんを雁字搦めに繋ぎ止めるだけだ」
無言の八雲に、青山はあたかも祈りの言葉のように静かに告げた。
「…君の愛が君たち二人を滅ぼさないように、願うばかりだ…」