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エメラルドの鎮魂歌
第8章 エメラルドの鎮魂歌 〜終わりの序曲〜
…和葉が呉に戻り、屋敷は再び静寂に包まれた。
青山と藍はあの日以来、ここを訪れることはなかった。
八雲宛に時折来る手紙には二人の近況が書かれていたが、それを瑞葉が読むことはなかった。
手紙はすべて八雲の手により焼却されていた。
東京の空襲はいよいよ激しさを増し、食料事情は更に緊迫した。
…しかしここ軽井沢では空襲もなく、和葉の豊かな援助により、瑞葉には戦前と変わらぬ生活を送らせることができた。
八雲は、青山に密かに野菜や米を送っていた。
財産家で富裕な彼のことだから、不自由はしてはいないだろうが、あの雪の日の言葉が八雲の胸に残っていたからだ。
…君のことは友達のように思っている…と。
彼はそう言ってくれたからだ。
…そうして、やがて季節が夏へと移りゆく晩春に、その知らせはあまりに突然に二人の元にもたらされたのだ…。
和葉の乗った軍艦が敵機に撃墜され、太平洋上に沈んだとの報であった。
青山と藍はあの日以来、ここを訪れることはなかった。
八雲宛に時折来る手紙には二人の近況が書かれていたが、それを瑞葉が読むことはなかった。
手紙はすべて八雲の手により焼却されていた。
東京の空襲はいよいよ激しさを増し、食料事情は更に緊迫した。
…しかしここ軽井沢では空襲もなく、和葉の豊かな援助により、瑞葉には戦前と変わらぬ生活を送らせることができた。
八雲は、青山に密かに野菜や米を送っていた。
財産家で富裕な彼のことだから、不自由はしてはいないだろうが、あの雪の日の言葉が八雲の胸に残っていたからだ。
…君のことは友達のように思っている…と。
彼はそう言ってくれたからだ。
…そうして、やがて季節が夏へと移りゆく晩春に、その知らせはあまりに突然に二人の元にもたらされたのだ…。
和葉の乗った軍艦が敵機に撃墜され、太平洋上に沈んだとの報であった。