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エメラルドの鎮魂歌
第8章 エメラルドの鎮魂歌 〜終わりの序曲〜
…その夜遅く、瑞葉は八雲の私室の扉をノックした。
「…瑞葉様…、どうされたのですか?」
生成りの寝巻きに濃紺のガウンを羽織った八雲は、驚いたように瑞葉を出迎えた。
いつもきちんと撫で付けられている艶やかな黒髪は前髪を無造作に下ろしていて、八雲を年より若く見せていた。
「…今夜は、八雲の部屋で寝たい…」
上目遣いで見上げると、生真面目に首を振られた。
「いけません。ここは使用人の部屋です。
ご主人様がお寝みになる場所ではありません」
「嫌だ。ここで寝る」
子どものように頑として言い張り、無理やり部屋に入り込む。
「瑞葉様…」
止めるのも聞かずに、八雲の寝台に潜り込む。
「…もう寝ちゃった…」
ブランケットから貌を出し、悪戯めいた眼差しを送る。
その様子に八雲は苦笑し、ゆっくりと寝台に近づいた。
「…仕方ないですね。今夜だけですよ」
エメラルドの瞳を甘く輝かせ、手を差し伸べる。
「来て…八雲…」
するりと瑞葉の隣りに滑り込み、その身体を優しく抱いた。
「…どうされたのですか?」
尋ねる男の深い瑠璃色の瞳を、その逞しい胸に抱かれながら見つめる。
「…八雲の話を聞きたくなって…」
「私の話ですか?」
怪訝そうな貌をする八雲の胸に、頬をすり寄せながら頷く。
「…さっき、ふと思ったんだ…。
僕は、八雲のことをほとんど何も知らないんだな…て。
お前は僕に自分のことを何も話してくれないから…」
瑞葉に腕枕をしてやりながら、その蜂蜜色の美しい髪を緩やかに撫でる。
ぽつりと男の声が響いた。
「…私のことなど…お聞かせするような話はありませんよ…」
「…瑞葉様…、どうされたのですか?」
生成りの寝巻きに濃紺のガウンを羽織った八雲は、驚いたように瑞葉を出迎えた。
いつもきちんと撫で付けられている艶やかな黒髪は前髪を無造作に下ろしていて、八雲を年より若く見せていた。
「…今夜は、八雲の部屋で寝たい…」
上目遣いで見上げると、生真面目に首を振られた。
「いけません。ここは使用人の部屋です。
ご主人様がお寝みになる場所ではありません」
「嫌だ。ここで寝る」
子どものように頑として言い張り、無理やり部屋に入り込む。
「瑞葉様…」
止めるのも聞かずに、八雲の寝台に潜り込む。
「…もう寝ちゃった…」
ブランケットから貌を出し、悪戯めいた眼差しを送る。
その様子に八雲は苦笑し、ゆっくりと寝台に近づいた。
「…仕方ないですね。今夜だけですよ」
エメラルドの瞳を甘く輝かせ、手を差し伸べる。
「来て…八雲…」
するりと瑞葉の隣りに滑り込み、その身体を優しく抱いた。
「…どうされたのですか?」
尋ねる男の深い瑠璃色の瞳を、その逞しい胸に抱かれながら見つめる。
「…八雲の話を聞きたくなって…」
「私の話ですか?」
怪訝そうな貌をする八雲の胸に、頬をすり寄せながら頷く。
「…さっき、ふと思ったんだ…。
僕は、八雲のことをほとんど何も知らないんだな…て。
お前は僕に自分のことを何も話してくれないから…」
瑞葉に腕枕をしてやりながら、その蜂蜜色の美しい髪を緩やかに撫でる。
ぽつりと男の声が響いた。
「…私のことなど…お聞かせするような話はありませんよ…」