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エメラルドの鎮魂歌
第3章 禁断の愛の果実
「…それは…誠でございますか…?」
八雲は敢えて和葉に近すぎる距離まで近づく。
自分の優れた容姿が、この少年を魅了していることをよく承知している。
…彼がいつも恋にも似た熱い眼差しで、自分を見つめていることも…。
和葉は、息苦しいような切ないような表情をした。
「…う、うん…。
僕は篠宮の家を継ぐつもりはないよ。
僕はお祖母様の操り人形になる気はないし…もっと自由に生きたい。
…第一、兄様を傷つけるような真似はしたくない」
八雲の大きく美しい手が、和葉の手を包み込む。
和葉の手がびくりと震えた。
「ありがとうございます。そのようなお優しいお言葉をいただいて…私は感激しております。
瑞葉様も、どれほど救われるお気持ちになられることでしょうか…」
照れたように、和葉が笑う。
「そんな…大袈裟だよ」
ずっと素気無くされていた男に、初めて優しい言葉を掛けて貰い、ときめきと高揚を感じているのが手に取るように分かる。
「…でも…どうしたらいいかな…。
お祖母様に、僕が家督を継ぐ気はないと分からせる方法は…」
思い倦ねる表情を優しく見守りながら、静かに告げる。
「…お聡い和葉様は最良の方法をご存じかと…。
けれど、どうぞご無理はなさいませんように…」
思い遣りに満ちた男の眼差しをくすぐったげに見上げ…和葉は頷いた。
八雲は慈しみ深い微笑みを送る。
…世間知らずで健やかな無垢な心を操るのは、とても容易い。
ほんの少し、その手を引いて彼をそちらの方向に導いてやるだけだ。
賢く心優しい彼が兄のためにできる最大の勇気を振るわせるように…。
「…和葉様。貴方のお優しさと勇気に、心より感謝いたします。
貴方こそ、真の貴族と言うべき資質を持たれた尊いお方です」
八雲は恭しく、そのまだ幼さの残る白い手に口づけを与えた。
和葉の指先が、緊張したようにきゅっと縮められる。
…貌を見なくても、その頬が紅潮している様を想像出来た。
八雲は誰知らずにそっと微笑む。
…私は…瑞葉様のためならば、悪魔にもなれるのだ。
八雲は敢えて和葉に近すぎる距離まで近づく。
自分の優れた容姿が、この少年を魅了していることをよく承知している。
…彼がいつも恋にも似た熱い眼差しで、自分を見つめていることも…。
和葉は、息苦しいような切ないような表情をした。
「…う、うん…。
僕は篠宮の家を継ぐつもりはないよ。
僕はお祖母様の操り人形になる気はないし…もっと自由に生きたい。
…第一、兄様を傷つけるような真似はしたくない」
八雲の大きく美しい手が、和葉の手を包み込む。
和葉の手がびくりと震えた。
「ありがとうございます。そのようなお優しいお言葉をいただいて…私は感激しております。
瑞葉様も、どれほど救われるお気持ちになられることでしょうか…」
照れたように、和葉が笑う。
「そんな…大袈裟だよ」
ずっと素気無くされていた男に、初めて優しい言葉を掛けて貰い、ときめきと高揚を感じているのが手に取るように分かる。
「…でも…どうしたらいいかな…。
お祖母様に、僕が家督を継ぐ気はないと分からせる方法は…」
思い倦ねる表情を優しく見守りながら、静かに告げる。
「…お聡い和葉様は最良の方法をご存じかと…。
けれど、どうぞご無理はなさいませんように…」
思い遣りに満ちた男の眼差しをくすぐったげに見上げ…和葉は頷いた。
八雲は慈しみ深い微笑みを送る。
…世間知らずで健やかな無垢な心を操るのは、とても容易い。
ほんの少し、その手を引いて彼をそちらの方向に導いてやるだけだ。
賢く心優しい彼が兄のためにできる最大の勇気を振るわせるように…。
「…和葉様。貴方のお優しさと勇気に、心より感謝いたします。
貴方こそ、真の貴族と言うべき資質を持たれた尊いお方です」
八雲は恭しく、そのまだ幼さの残る白い手に口づけを与えた。
和葉の指先が、緊張したようにきゅっと縮められる。
…貌を見なくても、その頬が紅潮している様を想像出来た。
八雲は誰知らずにそっと微笑む。
…私は…瑞葉様のためならば、悪魔にもなれるのだ。