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永遠の愛を奪って
第8章 知らない方が幸せなこと
本当は聞きたくもないのに、気になってしまってつい口に出してしまった。
すると、青木くんは人通りの多い廊下を避けるために誰もいない談話室へ行こうと手招きしてきた。
開けた扉を閉めた後、片手に持っていた缶コーヒーをテーブルの上に置いてから私の方を見てくる。
「葉月は今日は会社を休んだよ」
「そんなに熱があったんだね……」
「んー……、どうなんだろう。体調不良で休むってしか聞いてないからよく分かんねーかな」
この口ぶりと旅行最終日である昨日は午後九時辺りに別れたから青木くんは土嶋さんの家には行ってないんだと思う。
それでも今も様子が気になっているみたいな心配そうな顔をしている。
土嶋さんのことを考えている青木くんを見ていると胸が苦しくなってきて笑顔を作りにくくなる。
「そうなんだ……」
「あっ、このコーヒー。自販機に新しく入ったものなんだけど小春も飲んでみる?甘いから女子向けって感じ」
「えっ、どれどれ」
渡された缶に間接キスをしてごくりと飲むと、普通のコーヒーよりも甘さも感じつつもほろ苦さも感じた。
多分、土嶋さんのことがなければもっと甘く感じたんだと思う。