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ベストパートナー
第2章 麻衣子
 6

 本当に中途半端なまでの、和風な空間である。
 だから……和風モダンなんだろう。
 俺は和風を意識した、ベッドに敷き布団があり、膝元辺りに掛け布団がある。天井には万華鏡の中を覗くと見える景色が、一面に描かれていた。
 一戦終えて冷静になっているのは、賢者モードになったからだろう。


「オッサンだと思った……けど、激しいね」


 麻衣子のか細い声が、耳に入る。
 和風なサウンドが響いていた部屋の音楽を切ったのは少し前、安っぽいそれが気に入らなかった。
 今、音はない。
 そんな空間にコイツの声は静かを醸す効果音だった。


「気持ちよかった」


 麻衣子が寄り添ってきた。
 俺も肩を抱いやる。
 体温が心地よい。


「テルの体、温かい」


 麻衣子が言う。
 俺はしっかり、コイツを抱く。
 

「アハハ」


 麻衣子が笑い、更に密着させた。
 

「テルの鼓動がする」


 麻衣子が小さく言った。
 俺の鼓動……か。おそらく麻衣子のご両親と変わらないはずだろう。
 歳的にもおそらくは、ぴったりのはず。


「……アタシ、母はいる。だけど父はいない。幼い頃に別れちゃった」


 麻衣子がポツリと漏らした。
 俺は聞き流す……つもりだ。
 でも聞き耳だけは立ておこう。


「母……お母さんは、アタシが高一の時に再婚した。だけど次の男を認めてない」


 よくある話である。
 俺は小説書きだから、この手のことは驚かない。それは麻衣子の今のことが、真実であろうが、嘘であろうが、知ったことではない。
 

「ごめんね、テルもパパといっしょだね」


 麻衣子が笑う。
 ……パパ?
 俺は顔を顰める。
 

「今のアタシに、父はいない。でも……パパはいる。パパに学校を出させてもらっているんだ」



 麻衣子が話す。
 俺は静かに、聞き入ることにした。


 
 
 
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