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咲の旅物語
第16章 王都 ルアール
一方、咲は居住区らしき場所にきていた。

居住区と呼ぶには、粗末で不衛生極まりない様子に眉を潜める。
床は坑道をそのまま活用したのか、土でその上にベッドがわりなのか木の板が敷かれている。
布団と呼ぶには申し訳ないほど薄く汚れた布が置かれている。所々綻びも見えた。

更に少し行くとトイレであろう穴がある。

臭いが漏れるとかまるで考えられておらず、その居住区全域に悪臭を撒き散らしていた。

咲は入った瞬間に刺激臭に襲われ、耐えきれず体に結界を纏わせた。


「…ぅう…」

居住区を奥へ進むと咲の耳に唸り声が聞こえてきた。
ドキッとしたが、恐る恐る声のする方へ足を向けると何かが板の上で踞っていた。

「あの…」

声をかけると、ソレは小さくビクッと震えゆっくりと振り返る。

「ひっ!」

その風貌に咲は小さく悲鳴をあげる。

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