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約束 ~禁断の恋人~
第2章  決意


 脳死となった時点から、無理矢理心臓を動かしている。負担がかかって当たり前だ。
 そのままにしておけば、寿命だって縮まってしまう。
 心臓については専門外だが、止まれば心臓の手術も必要になる。
 大学やインターンでの経験で自信はあったが、出来れば移植だけで済ませたい。
 自分の腕を信じつつも、祈りながら続けた。
 消耗していく体力は、精神力で補う。海の笑顔を思い浮かべながら、僕は懸命に戦った。
 やっと頭部の縫合が終わり、鎮痛薬の点滴を処置する。
 心電図は、順調な数値を示していた。
 壁の時計を見て、手術に6時間近くかかったことに気付く。
 研究所でチップに機動命令を出してから、開始まで30分くらい。
 後6時間もすれば、海が目を覚ますはずだ。
 血液が着いた手術着に気付いた。
 目を覚ました海が血の付いた手術着や器具を見たら、驚くかもしれない。自然食品の血とは違う。
 器具を洗って消毒液へ漬けて、汚れた手術着やガーゼなどは、全て特殊廃棄物のボックスへ入れた。
 僕自身にも、血や消毒液の匂いが付いているだろう。汗もかいている。
 急いでシャワーを浴びて戻ると、彼の容態に変化が無くて安心した。
「海……」
 ベッドに上体を預けるようにして、彼の顔を見つめる。
 ただ眠っているだけにしか見えない海の胸に、そっと手を当てた。
 規則正しく繰り返す心音と呼吸。
 僕はそのまま、いつの間にか目を閉じていた。



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