この作品は18歳未満閲覧禁止です
![](/image/skin/separater1.gif)
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
わがままな氷上の貴公子
第9章 ファイナル
![](/image/mobi/1px_nocolor.gif)
でもどうしてここまで出来るのか、自分でも不思議だった。
今までなら、後半にこんなに跳べなかったのに……。
鈴鹿に相談した時も、後半に入れられるのは4回転一つくらいだと思っていた。
ステップシークエンスの後は、長めのイナバウアー。
拍手や歓声が凄い。
知らない間に、持久力がついてるのか?
でも、さすがに疲れが出てくる。
それでも、苦しい表情は見せない。
あくまでも優雅に美しく。
指先まで神経を使う繊細な滑りが、オレの武器だ。
ここでは単独の3アクセルの予定だったが、4回転フリップと3ループの連続技。
着地の時に少し流れた感じはあったが、それでも悪くはないはずだ。
観客からの拍手と声援。
それが何よりの力になる。
コレオシークエンスを挟み、最後のジャンプ。
これもコンビネーションにしなければ、今までが無駄になる。
勢いをつけていった。
やるしかない!
これで最後なら、回避して悔やみたくない。どうせ悔やむなら、失敗して悔やむ方がマシだ。
勝手に変えたプログラム。
疲れてはいるが、それに責任を持つのはオレだ。
思い切って踏み切り、3サルコウと3トウループのコンビネーション。
成功した!
残りは、得意な演技。
ドーナツスピンから、綺麗に胸を張ったレイバックスピン。
そのまま脚を降ろし、最後のポーズを決めた。
出来た……。
少しの間息を整えてから、四方向へのお辞儀。
スタンディングオベーションの嵐。
潤の、「悠ちゃん!!」という声も聞こえた。
今なら、キスアンドクライまで運んで欲しい。
流れる汗を拭ってから、いくつか花束を拾いながらリンクサイドへ戻る。
「望月!」
鈴鹿に迎えられ、まだ整わない呼吸のままハグを受ける。
終わった……。
もう、結果はどうでもいい気分だった。
リンクへ出る前から、気持ちは決まっていたから。
![](/image/skin/separater1.gif)
![](/image/skin/separater1.gif)