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わがままな氷上の貴公子
第10章  意地


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「悠斗さん? 迎えの車が着くまで、あと三十分ですよ?」
 目が覚めたのは、ドアの外からの和子さんの声のお蔭。スマホの目覚ましを掛けてあったのに、止めてしまったらしい。
 まだ潤は寝ている。
 こいつの予定は知らない。でもまだ5時半。寝ていても構わないだろう。出来れば、別の場所がいいが。
「あっ、うん。すぐ支度する」
 和子さんがドアを開けなくてよかった。オレも潤も、裸のままだ。
 オレは、少しって言ったよな!?
 セックスの“少し”とか“たくさん”は測れないだろうが、いつものように三回ヤりやがって……。
 三回ていうのは、あいつがイった数。オレは何回か覚えてない……。
 急いでシャワーを浴び、支度を済ませて一階へ行った。
 ドライヤーを使っても、潤は寝たまま。後は和子さんに任せればいい。
「潤くんは、まだ寝てるんですか?」
 ダイニングには朝食が用意してあるが、食べる時間はなかった。
 あいつが全部食べるだろう。オレは、ゼリー飲料で充分。
「ん……。昨夜遅くまで、話し込んでて……。そのまま、寝たから……」
「悠斗さん。隠さなくてもいいんですよ」
 何を……?
「私からは、ご家族にも言いませんし」
 だから、何を……。
「潤くんとのこと。私が、知らないと思ってるんですか?」
「え……」
 あいつ。何か言ったのか?
「悠斗さんだって、思春期の高校生だとは分かってます。でも、誰がシーツを洗ってるか、分かりますよね?」
 そうだ……。
 取り換えたシーツは、いつも部屋にある洗濯用のカゴへ入れるだけ。オレやあいつの……。色々と、付いていただろう……。
「私にも、息子がいますから。今は会えませんけど」
 和子さんの私生活を聞くのは初めてだ。もう二十年近くここにいると、母親から聞いてはいたが。
 二十年近く前なら、和子さんは三十代だっただろう。
 リビングのソファーへ座り、和子さんを見た。
「子供に恵まれて、18歳で結婚しました。でも色々とあって、息子が中学生になった年に離婚したんです。その後、すぐこちらへ」
 そんな過去があったなんて……。


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