この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
わがままな氷上の貴公子
第2章  プライド


 和子さんも紅茶が好きだから、淹れ方も上手い。
 コーヒーが苦くて飲めなかった子供の頃、和子さんが美味しい紅茶を淹れてくれた。紅茶しか飲まなくなったのは、それからかもしれない。
 色々なリーフを選んでくれるが、これはアッサム。
 濃厚なコクがあり、甘味も強く芳醇な香り。ミルクティー向きだが、オレはストレートが好きだ。
「あれ、悠ちゃんの?」
 サイドボードに並べられたトロフィーや盾を見て、紅茶をガブ飲みした潤が立ち上がる。
 でかいヤツは、熱さも感じにくいのか?
「凄いね。全部フィギュアでもらったんだあ」
 いいって言っているのに、母親と和子さんが共謀して飾っている。
 最高でも、世界大会の四位。表彰台まであと一歩。その一歩が遠い。
 トロフィーや盾に交ざって、昔からの大会の時の写真も飾ってある。潤はそれをじっと見てから顔を上げた。
「悠ちゃん。小さい時も、やっぱり綺麗だねえ」
 紅茶を噴き出しそうになる。
 それは事実でも、剥いたリンゴを持って来た和子さんが聞いてるんだぞ!
「悠斗さんは、並みの女の子よりずっと綺麗ですよね」
 くすっと笑った和子さんが、オレを覗き込む。
「今日は、これで失礼しますね」
「ん。大丈夫」
「冷凍庫に、ピザとグラタンがありますから」
 明らかに潤へ向けた言葉。
 今日はこれ以上、潤が何か食べるのを見たくない。
 でも潤は笑顔で頷き、オレと一緒にリビングで和子さんを見送った。
 玄関が閉まれば、自動ロックが掛かる。それぞれがカードキーを持っているから、問題はない。
「悠ちゃんが滑ってるとこ、見てみたいな。試合いつ? 見に行くから」
 試合はアイスホッケーだろ?
 大会って言えよっ!
 でもオレは、シニアに上がったばかりの圭太にトリを取られる状況なんだよ。
 トリを滑ること自体はどうでもいい。副コーチの赤坂に言っていた通り、発表会はくだらないお祭り。
 重要なのは、選ばれることだ。
 中二の時から年上を抑え、トリに選ばれていたのに。
 またイライラを思い出して、立ち上がった。
「来いよ……」
 そのまま三階まで上がると、潤は大人しく付いてくる。


/141ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ