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わがままな氷上の貴公子
第3章  心配


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 それからの一週間は、学校を早退しての個人練習。
 ウチの学校はスポーツで優秀な成績を修めれば、時間がある時の適当な補習で何とかなる。そうじゃないと、国体レベルの選手さえ育たない。
「何でオレが、こんなトコで、滑んなきゃなんないんだよ……」
 日曜は、約束通りの時間に来てやった。でも、混雑した遊戯用のリンクを見てげんなり。
 一応マスクをして、髪は練習中のように結んできた。
 フィギュアファンに見つかれば、大騒ぎになるだろう。大袈裟な変装をすれば、余計に目立つし。
 千絵は、黒縁の眼鏡をかけているだけ。
 すぐにバレそうだけどな。
「たまにはいいじゃん。ホラっ」
 千絵に背中を叩かれて、仕方なくリンクへ降りた。
 氷の状態も最悪。気を付けないと、エッジが引っ掛かりそうだ。ジャンプをしなければ、そう問題も無いが。
 “美少年フィギュアスケーター”が一般のリンクでコケるなんて、冗談じゃない。
 見ると、塔子に手を引かれた潤が、よろよろしながらも笑顔で滑っている。
「ねぇ。あの二人、何かイイ感じじゃない?」
 千絵が潤と塔子を見ながら嬉しそうに言う。
「塔子、ガタイのいい人がタイプだから。潤くんて、彼女いるの?」
「知らない」
「友達なのに、知らないんだー」
 そう言うと千絵は中央に行き、軽いスピンなんかしている。
 お前は昔から、目立ちたがり屋だったよな。
 まあ。それくらいじゃないと、フィギュアなんてやっていられないけど。
 オレが目立つのは、大会だけでいい。こんな場所に来ていること自体恥ずかしすぎる。
 リンクへ降りたからには、突っ立っているわけにもいかない。目立つし、寒いし。
 本当に最悪だっ!
 取り敢えず、周りに合わせながら滑り出した。
 大して上手いヤツもいない。
 自分もおぼつかないのに、女性の手を引いて滑っている男。抱き合うようにして滑っている男女もいた。
 潤も塔子に手を引かれて滑っているが、一周するのにどれくらいかかるんだ?
 でも塔子は子供の頃やっていただけあって、基礎は出来ているらしい。初心者を引っ張りながらバックで滑るのは、結構大変なんだ。


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