この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
わがままな氷上の貴公子
第3章 心配
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
それからの一週間は、学校を早退しての個人練習。
ウチの学校はスポーツで優秀な成績を修めれば、時間がある時の適当な補習で何とかなる。そうじゃないと、国体レベルの選手さえ育たない。
「何でオレが、こんなトコで、滑んなきゃなんないんだよ……」
日曜は、約束通りの時間に来てやった。でも、混雑した遊戯用のリンクを見てげんなり。
一応マスクをして、髪は練習中のように結んできた。
フィギュアファンに見つかれば、大騒ぎになるだろう。大袈裟な変装をすれば、余計に目立つし。
千絵は、黒縁の眼鏡をかけているだけ。
すぐにバレそうだけどな。
「たまにはいいじゃん。ホラっ」
千絵に背中を叩かれて、仕方なくリンクへ降りた。
氷の状態も最悪。気を付けないと、エッジが引っ掛かりそうだ。ジャンプをしなければ、そう問題も無いが。
“美少年フィギュアスケーター”が一般のリンクでコケるなんて、冗談じゃない。
見ると、塔子に手を引かれた潤が、よろよろしながらも笑顔で滑っている。
「ねぇ。あの二人、何かイイ感じじゃない?」
千絵が潤と塔子を見ながら嬉しそうに言う。
「塔子、ガタイのいい人がタイプだから。潤くんて、彼女いるの?」
「知らない」
「友達なのに、知らないんだー」
そう言うと千絵は中央に行き、軽いスピンなんかしている。
お前は昔から、目立ちたがり屋だったよな。
まあ。それくらいじゃないと、フィギュアなんてやっていられないけど。
オレが目立つのは、大会だけでいい。こんな場所に来ていること自体恥ずかしすぎる。
リンクへ降りたからには、突っ立っているわけにもいかない。目立つし、寒いし。
本当に最悪だっ!
取り敢えず、周りに合わせながら滑り出した。
大して上手いヤツもいない。
自分もおぼつかないのに、女性の手を引いて滑っている男。抱き合うようにして滑っている男女もいた。
潤も塔子に手を引かれて滑っているが、一周するのにどれくらいかかるんだ?
でも塔子は子供の頃やっていただけあって、基礎は出来ているらしい。初心者を引っ張りながらバックで滑るのは、結構大変なんだ。