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わがままな氷上の貴公子
第6章  本音


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「おはよう」
 部屋着に着替えてダイニングへ行くと、潤が朝食を食べている。
「あっ、悠ちゃん。おはようっ」
 朝から元気だな。
 ……って。どうしてこんな早くからウチにいるんだ?
 まだ五時だぞ?
 オレは生放送のテレビ出演があるから、早く起きたのに。
「ゲストルームに泊ったんですよ」
 和子さんが笑いながら、温野菜とチキングリルとフルーツを出してくれる。
「俺、一時限目からあるんだあ。一度寮に、鞄取りに戻らないといけないし」
 ウチはいつからホテルになったんだ? こいつ専用の。
 それも、潤は朝から大量のおかず。
 肉野菜炒めに、肉巻き野菜。豚汁まである。
 おかずは減ってるのに白米が大盛りなのは、もうお替りをしたからだよな?
 何も言う気になれない。
「お友達はちゃんともてなすよう、奥様から言われてますから」
 オレの表情で分かったんだろう。和子さんは笑いを堪えている。
 もう好きにしてくれ……。
 潤を見ていると食欲がなくなるが、体力維持にためにきちんと食べた。
 身支度を整えてから大きな鞄を持ってくると、潤がボーっと見ている。
「何だよ……」
「綺麗だけど、制服じゃないね?」
「選手のブレザーだよ」
 大会後のテレビ出演などは、決められたジャージかこのブレザー。品のあるオレには、ジャージよりブレザーの方が似合う。
「悠ちゃん。駅まで一緒に行こうよお」
「オレは迎えが来るから。お前は勝手に行けよ」
 六時には、テレビ局からの迎えの車が来る。
 それを言うと、潤は落ち込んだ様子。
 そうじゃなくても、電車になんか乗れない。
 一昨日の大会と昨日のテレビ出演は、日本中で放送されているんだぞ?
「えー……」
 そんな情けない顔をしても、オレにもどうしようもない。
「悠斗さん。車が来ましたよ」
 和子さんがインターフォンを取って言う。
「行ってきます。……じゃあなっ」
 一応声をかけてやったんだ。それだけでもありがたいと思え。
 外へ出ると、どこで家を知ったのか、ファンの女達も結構いた。にっこり微笑んでやると、「キャー!」という黄色い声。
 これも営業の一部だ。
 協会からも、ファンには出来る限り丁寧に接するよう言われている。
 スタッフに守られながら、俺はワゴン車へ乗り込んだ。


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