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わがままな氷上の貴公子
第7章  不安


「もしもし?」
《悠斗くん?》
 確かに塔子の声。
《潤くんと約束してたんだけど、ずっと来ないから、調べて、寮に問い合わせてみたの》
 何故か慌てたような声。
《入院で、田舎に帰ってるんだって……。まだ、戻ってないみたいで……》
「入院?」
 健康そうなあいつが?
 田舎に帰るほど悪いのか?
「ありがとう……」
 そう言うのがやっとだった。
 通話を切って和子さんに内容を話すと、オレからスマホを奪い取る。
「実家なら、電話帳に入ってるはずですから」
 スマホを弄り始める和子さんを、見つめていた。
 勝手に病気になりやがって……。
 ウチに来られなかったのは、そのせいか……。
「上小園茂夫(しげお)ってありました。かけてみますね」
「ん……」
 スマホを使い、和子さんが電話を始める。
 椅子に座ったまま、オレはただ眺めているだけ。
 自分が何をすればいいのか、頭が上手く回らない。
 入院……。
 それだけが頭の中を巡っていた。
「お年寄りの方言て、分かりづらいわ。でも、病院は分かりましたから、早く支度してください」
「え?」
 和子さんが、今度は家の電話からどこかへかけている。
 また、オレは見ているだけ。
「航空券が取れましたから。タクシーも呼んでおきますね」
 背中を押され、部屋へ行った。
 キャリーバッグに荷物を詰め、それを持って一階へ行く。
「すぐにタクシーが来ますから。明日の練習は、私からコーチに連絡しておきます。体調が悪いって」
「ありがとう……」
 和子さんから渡されたのは、病院の名前と電話番号などが書かれたメモ。
 それを上着のポケットへ入れ、到着したタクシーで空港へ向かった。


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