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わがままな氷上の貴公子
第9章  ファイナル



 グランプリファイナルの当日まで、千絵に会うことはないまま。
 会えば普通に接するが、今は人の心配をするほど余裕がない。
 でも、その必要はなかった。
 千絵はショートプログラムもフリープログラムも見事に滑り切り、日本人トップの三位。
 女子は三枠あるから、オリンピックはほぼ確定だろう。
 オレがショートでの抽選会で引いたのは、本堂の前。そのお蔭か、全体の一位に立てた。
 九十九は初めてのファイナルで圧倒されたせいか、転倒もあって全体六位の日本人三位。本堂も珍しくミスがあり、全体の三位。日本人の二位だった。
 それでも、まだ分からない。
 フリーは、オレにとって鬼門とも言える。フリーで、二人に巻き返される可能性もあった。
 ミスなく滑ること。オレはそれだけを考えるしかない。
 バックステージでの本堂は、余裕とも思える笑顔で挨拶をしてきた。オレも負けずに、穏やかな笑顔で答えてやる。
 本堂が得意とするのは、フリーの方。だからショートでのミスも気にしていない様子
 マスコミもファンも、オレと本堂の対決について騒いでいる。
 それは気にならない。
 本堂に勝てなくても、日本人二位までに入ればいいと自分を勇気付けていた。
 六分間練習が始まる。
 会場には本堂に負けないくらいの、オレの横断幕が出ていた。
 客席の上の方には、戦いを終えた女子の選手団。千絵もいて、仲間と雑談しながら見ている。
 一番前の席には、和子さんと母親と兄貴。そして潤。父親は海外から帰れず、テレビで観ると言っていた。
「悠ちゃん! 頑張ってっ!」
 ざわつく会場の中でも、潤の声がはっきりと聞こえる。
 演技本番中には声を出すなと言っておいた。隣に和子さんもいるから、大丈夫だろう。
 このために家へ戻った母親も、潤を見て驚いていた。
 オレが友達として家に呼ぶのは、昔だが千絵くらいだ。やはり潤のガタイを見て、「フィギュアやってるの……?」と訊いていた。
 オレを「悠ちゃん」と呼ぶことにも、驚いていたし。
 そんな様子を思い出すと、リラックスしてくる。
 後ろに注意してから、トリプルアクセル。
 拍手と歓声が起こる。
 その直後、客席から悲鳴のような声が上がった。


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