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逃げた花嫁と王の執着愛~後宮秘帖~
第2章 優しい想い出
 質素な身なりをしていても、彼女は十二分に美しかった。今や怒りのためか、白石膏のような膚がほんのりと桜色に染まり、大きな黒曜石の瞳は宝石のように輝いている。





 要するに、ソンが何も言い返せなかったのは、情けなくも彼女に見惚れていたからであった。






「わ、私が塀に登っていたのは童のごとく浮ついた気分からではない」
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