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逃げた花嫁と王の執着愛~後宮秘帖~
第3章 紫陽花の夜に
 まもなく蓮花の季節になる。今はまだ花は見あたらないけれど、蓮池が純白、或いは薄紅色の大振りな花で埋め尽くされる光景はさながら極楽絵巻をこの世に再現したかのようだ。今年の蓮をチェスンと眺められると想像しただけで、ソンははやもう顔がだらしなく崩れそうになってしまうのだった。



「殿下」





 池の面にもチェスンの優しい笑顔が映って見えるのだから、これはもう相当恋の病が進んでいる。おまけに空耳まで聞こえてきたかと思った矢先、間近で呼び声が聞こえた。
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