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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第4章   岬? 


 自分の部屋の中に均くんを招き入れるのは、これで四回目のことだ。だけど前の三回とは違い、現在のわたしの心情は平静そのもの。ドキドキと煩わしいほどに脈動する心臓とも無縁で、胸の中で波風が立つことはなかった。

 たぶん、今のわたしは感情の大部分を停止している。だからこそ、過去を辛いものとして隠す必要すら、思い至ってはいない。均くんがしりたいのならば、それを語ることを厭わない。

 でも、まず話を切り出したのは均くんの方だった。

「それで……さっきのことなんだけど」

「さっきって?」

「コンビニのところで、その……見たでしょ?」

 そう言われてはじめて、コンビニの前で抱き合う二人の光景を頭に思い浮かべた。忘れていたわけではないけど、意識するまでのことではないから。

「それが、なにか?」

「なにかってことでもないけど……もし、気にしているのなら」

「別に」

 わたしは素っ気なく、その短い言葉を返した。均くんのぎょっとした顔を見て、それではあんまりだと、やや思い直す。今度はこちらから水を向けた。

「あの女の人、美里さんといいましたっけ?」

「う、うん。でもね、ああなったのには事情があって――」

 とはいえ、わたしにとって、それは済んだ話。二人の姿を前にして確かにショックを感じたけど、それは全て〝岬〟のものなのだ。

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