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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第7章 タモツ

岸井さんは暫くそうした後で、きっと鋭い視線を向けた。
「私、病気なの」
「?」
「アハハ! といっても、頭の中身が病んでるって意味じゃないよ。ホント、真面目な病気なんだ」
彼女のいう「真面目な病気」という表現に独特なものを感じながら、続く言葉を聞いた。
「だから、一人じゃ心細いの。だから、晶と別れて」
たとえそれがどんな病気でも、そう言われただけで納得できる話ではない。
「美里さんは、なんて言っているんですか?」
そう聞くと、岸井さんはまるで言葉が聴こえないような素振りで、視線を泳がせた。
「あなたに言われて『別れます』というわけにはいきませんから。どの道、美里さんと話してみないと――」
すると、こちらの言葉を遮るように、そっぽを向いたままの岸井さんが言う。
「卑怯だと思う?」
「え?」
「病気だってことを盾にして、晶の情の深さにつけこんで……私って、卑怯だよね」
「……」
「こんな、私みたいのを相手にする時はさ。キミだって、手段を選ぶ必要はないんじゃない? ふざけんな! 二度と近づくな! って、力で追い返せばいいじゃん」
そう言った岸井さんの目が、ぎらりと光った。
ああ、この人は本気なんだ。そう感じながら、彼女に言われたことを、もう一度、頭の中でよく考えてみた。それから――
「そうですね。僕だって、卑怯者にはなりたくないです」

