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不器用な夫
第2章 執事
寝起きで頭がハッキリとしない。
一体、何が起きてる!?
夕べは…。
「まさかハコか…?」
冷静になってベッドから出る。
寝室を飛び出すと目に痛みが走る。
不味いな…。
火災報知器が鳴りそうな勢いだ。
匂いの元となるキッチンへと辿り着く。
慌てて住居換気システムのリモコンを操作し換気を強に切り替えながら、その匂いの元に佇むハコに向かって僕は叫ぶ。
「何をしてるのですか!?」
ここはタワーマンションだ。
窓を開けて換気する事が出来ない造りになってる以上はキッチンなども火の手が上がらないように全てが電気のみのシステムになってる。
そのオール電化というキッチンでハコが丸焦げでまだ煙を上げるフライパンを抱えてる。
白いベビードールにエプロンを付けただけのはしたない姿でハコが眉を顰めて僕を見る。
「朝ご飯の用意…。」
そうハコが口を尖らせて答える。
「朝ご飯?」
「パンケーキを焼いたの…、でも…、何故か上手く出来ないの。白鳥と練習した時は失敗なんかしなかったのに…。」
ハコが情けない顔をする。
テーブルの上にある白い皿には黄色いアメーバーのような液体をドロりと吐き出す真っ黒に消し炭と化した謎の物体が横たわる。
「朝っぱらから謎の錬金術ですか?」
「違うもん!だからこれがパンケーキだもん。」
夫婦になったばかりの僕らは朝から睨み合うという状況を醸し出す。
「茅野君…。」
「ハコだもん。」
泣きそうな顔でハコが俯く。
さすがに僕も言い過ぎたとは考える。
朝食の用意などした事のないお嬢様の努力を僕は認めてやるべきなのだとは思う。
だからハコの頭を撫でてやる。