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第11章 見られている

動揺した私は、慌てて立ったまま「はい、大田です」と電話に出てしまった。

「あのう、石井だけれども・・・」と石井さんの声は歯切れが悪かった。

「あっ、はい・・・、今日はどうもありがとうございました」とまずはお礼を言った。

「いや、こちらこそ。なんか、あまり楽しませて上げられなかったのかなぁと思って・・・。メールまで貰ってたんだけど・・・」と口ごもる石井さんに、「いえ、楽しかったですよ」と言うと、「そう？」と私の本心を探るように言ってきた。

だから私は素直に「私も経験がないから緊張していたんです」と言ってあげると、途端に「そうなの？」と石井さんの声が明るくなって、「なんか、僕も緊張しちゃってさ。なんかさぁ、高校生の初デートみたいになっちゃって、どうしていいのかわからなくなっちゃっていたんだよ」と言ってきた。