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第15章 やっぱりＡさんがいい

「泣いているのか？」

そう聞いてきた顔には嘘みたいにもう先程まであった恐ろしさがなくなっていて、いつものＡさんに戻っていた。私は小さく頷く。

「どうして？」

何もいえない私は、小さく首を振った。

言う言葉が見つからない、ただ、さっきよりも大粒の涙が溢れた。

その涙の粒をＡさんはそっと拭ってくれる。

温かくて優しい指先動きに、私はこれが欲しかったと思った。

「ごめん、乱暴だったね？」

それにまた首を振ったけれど、なんでそうしたのか自分でも分からない。