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お良の性春
第1章    好色歌留多 裸地獄
 薬問屋の娘お良は朝からうきうきしていた。

 その日、お良は早川様のお屋敷で開かれるカルタ会に招かれていた。
 かれこれ十年ほど前、早川家の主・仙太郎は、傾きかけた藩財政の建て直しを命ぜられた。
 そのとき、仙太郎が目を付けたのが、藩の清涼な気候を利用した薬草栽培であった。
 庄屋や豪農に働きかけ領内の山間僻地を活用。
 その折、仙太郎の知恵となり、手足となって働いてくれたのが薬問屋の伊兵衛。
 中でも、薬草の販路開拓に当たって、伊兵衛の力は大きかった。
 結果は大きな成果を生んだ。
 薬草の栽培と江戸・上方をはじめとした販路の全国展開に成功。
 藩は無論、たずさわった百姓、さらには薬問屋伊兵衛も、その利益に預かった。

 そんなわけで、仙太郎にとって伊兵衛は仕事仲間。家族ぐるみの付合い。娘の出入りも許されていた。

 お良は町家の娘だったが、父の計らいで読み書きそろばんどころか、和歌も詠めば、筆も立つ。「百人一首」はもちろん諳んじていたし、カルタ取りも一目置かれる腕前。
 しかし、お良がいつにもましてうきうきしているのには、もうひとつ別の理由があった。それは、例年、このカルタ会に若い男数人が参加するからである。

 今風に言えば「カルタ会合コン」である。
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