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第3章 　　悶絶　寝屋の戒め四ヶ条

　それからまた一月ほどして、お良は養女として喜多川家に入った。そこで、養母お梅の教えを受けた。
　武家と商家では何かと仕来たりが違う。
　お梅は段取りよろしく、華道や茶道を手始めに、行儀作法から家事全般を教えてくれた。

　「お良は飲み込みが早いし、それに、お母様の躾も大したもの」

　お梅はそういってお良を誉めた。
　大方のことはすでに心得ていたお良も誉められて嬉しかった。

　（今までより真剣に習わないといけない）

　お良は気を引き締めた。
　そんなある日、お梅は一枚の巻物を手に、お良を座敷に呼んだ。

　「お良、これは新床を迎える嫁の作法を記した一門に伝わる『寝屋の戒め』です」

　お梅はそう言いながら、手に持った巻物を差し出した。