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淫習
第1章 •専業主婦_雪枝:山奥の村
「これを…どちらで……?」

 その女性は驚いた顔で若者から示された“それ”を見詰めていた。
 “それ”はスマホぐらいの大きさの木の板で、細かい装飾と文字らしきものが彫られていて、見るからに年季が入ったものだった。

「具合を悪くしているご老人を見掛けたので、私にできる事をさせていただきました。そうしたら、これをお礼にって渡されまして…。あ、僕は山田翔と言います。大学生で、夏休みを使って旅をしているんです。旅と言っても目的地は決めてなくて、直感で進んでいるだけなんですけど」

 女性の反応に戸惑いながらも、翔は今までの経緯と自分の素性を包み隠さずに伝えた。

 自由気ままな旅。

 ローカル線で終着駅までいってみよう。
 取り敢えずバスに乗ってみよう。
 次のバス停で降りてみよう。
 こんな感じで、思い付きのまま進んでいたので、この村に辿り着いたのは偶然だった。
 翔は老人と出会って何があったのかも詳細に伝えたのだ。

「この御札の意味はご存知なのですか…?」

 翔の素性を知って少しだけ警戒感は消えたようだったが、女性の困惑した様子は変わらなかった。
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